スピッツ著書『旅の途中』読書記録 2020年Ver.

Amazonを開いてみたら、私が『旅の途中』を購入したのは2011年6月5日でした。8年前のことがちゃんと記録として残されてるって凄いね。

スピッツに関する卒論を書くために購入して読んだのですが、この度ちょっと電車で読むのにいい本ないかな~と本棚を漁っていたら久しぶりに見つけて、久しぶりに手に取ってみました。

30/50すら若干懐かしく感じる今日この頃ですが、この本が発行されたのは2007年、スピッツ結成20周年の記念出版だったようです。

これ、どうやって本になったのかな。それぞれのメンバーに、この20年の振り返りをしてください、って言って書いてもらって、それを編集者の方が時系列で並べ替えてこの1冊になったのかな。そのお仕事最高すぎん…?メンバーたちの正直な感じがまた良い。まだ気分はアマチュアだったから…とか、20年経ったから認められるし、文章だからこそ告白できるみたいな。尊い。

2011年にこの本を読んだ時は「スピッツも大変な時期を経て来ているんだなあ~」程度の印象だった気がするけれど、これ、改めて読むと順風満帆な時期ほとんどなくて、誰かが精神的にプツっと行っちゃってもおかしくないくらい、いろんな苦悩があって冷や冷やする。2007年当時に読んでいたら、「スピッツ大丈夫かな…?このまま活動続けてくれるかな…?」って不安になるかも。特に初期三部作以降、『隼』くらいまではメンバーかなり辛そう。『ロビンソン』が売れた時期のことも、全然嬉しそうな書かれ方じゃないし、それぞれがずっとモヤモヤしてて、4人の不器用さや、なんというか後ろめたさのようなものが常に見え隠れしている。当時のFC会報誌とか、どういうテンションで書いているんだろう。すごく気になる。この本のために20年を振り返って、自分の言葉で書いてみて、って上から言われたのかな、それも辛かったんじゃないかな、などと当時のことまでちょっと心配になった。4人とも本当に音楽が好きなのは伝わってくるけど、結成からプロの自覚を持つまでは異様に長く感じる。

ただ、結果として「音楽が好きでバンドがやりたい、スピッツというバンドを続けたい」という各々の気持ちが揺るがなかったからこそ今も続いているんだろうなとも思う。誰かひとりでももっと商業的志向になってしまっていたら、今のスピッツはないかもしれない。

この本の帯には、こう書いてある。


"「バンドがやりたい!」
熱い思いだけを胸に上京した草野マサムネ、田村明浩、三輪テツヤ、崎山龍男。
何かに導かれるように出会った4人。
彼らが結成したスピッツは、やがて日本を代表するバンドになっていく‥‥‥。
抱いてきた想いが赤裸々に綴られた歴史的決定版!"


去年『見っけ』をリリースした時に色んな雑誌のインタビューを受けているけど、そこで何度も目にして印象に残ったのは、メンバーの「バンドが好き」という言葉。本当に色んなこと、―技術が足りないとか売れないとか思ったような音にならないとか出したくないベスト盤を出すとか結局音楽は無力だとかの悩み苦しみ―を、「それでもバンドがやりたい」っていう気持ちで乗り越えてきたんだろうなと感じる。

今でこそ、「本当にすごいな、スピッツを続けてくれてありがとうございます」って思うけど、『旅の途中』だけ読んだらそうも言えないというか、20周年の時点だと、スピッツは本当にこの後もスピッツとして生きていくことに納得しているのか、幸せに感じているのか?って疑問に思ってしまうところがある。『旅の途中』という言葉も、どこかに終わりを見据えているような…というのは言いすぎかもしれないけど、特に草野さんは別の生き方を選びそうな余白を感じる。

とはいえ、ここ最近のライブでは「スピッツは解散しません」宣言をしてくれているから、この10年強でまた考え方や価値観が変わったんだろうなあ。こう、その心境の変化を隠さないというか隠せないというか、その辺もスピッツらしいなあと思うけど。

あと、p.312で三輪さんが

"「スピッツが二〇年続いている理由」を聞かれても明確な答えなんてない。だけど、四人とも忘れっぽいことと、自然にバランスをとろうとすることが理由の一つのような気がする。"

と書いているんだけど、ROCKIN'ON JAPAN(November 2019 Vol.513)で、

"基本的には何も変わってない。さっき田村も言ったけど、リハ入るととにかくいつも新鮮なんだよね。(中略)…『それってなんだろうね』って話をそんな真剣に話してなかったけど、誰かが『俺らきっと忘れっぽいんだよ』みたいな。あ、いい意味で忘れっぽいからいつも新鮮でいられるんだなっていう。"(p.38-39)

とまた仰っていて、そういうとこな!と思った。けどまじで変わってない、且つ12年前に書いたことを忘れてるから同じこと言ってるんでしょうね。なんか愛しい。

p.306の二行目を読んで、「ああ…この20年の間に、誰かが撮影中にウンコ踏んだことがあるんだな…」ってしみじみ思えるところも良いですね。

2007年の時点での本音、過去の想い、悩みが本人の言葉で書かれているというのはとても貴重だなと思う。なんか、読み直すまでは「またスピッツ本出して~!」と軽々しく思っていたけど、本人たちへの負担とか考えると、FC会報をあんなに丁寧に作ってくれているだけで十分有難いなと思いました。とにかくどんな頻度でもいいから楽しく音楽を作り届け続けてほしいなと、それだけは勝手ながら、一ファンとして願わせてほしい…。

スピ通信

とあるブリーダーが綴る、スピッツとの“僕”と“君”の話。

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