娯楽だけどそれで生きている。
今週、スピッツがニューアルバム『見っけ』をリリースするということで、ロキノンや音楽と人で表紙飾っている。発売日に買いに走っては読み、アルバムに向けて自分のテンションを上げている。インタビューとても興味深かった。もう今の彼らにとって大事なのって「4人でバンドをすること」に集約されていて、ライブがしたいでもなく、アルバムを出したいでもなく、究極「スピッツでいたい」わけですらなくて、このメンバーでバンドしたい、っていう思いで32年スピッツを続けてる。いやさすがに語弊があるな。ライブは好きだと思うしメンバーみんな草野さんが作ってくる曲を楽しみにしているんだけど、その一番の核の部分は?となるとバンドを続けるということになるのかな、と私は読み取った。その32年の間に音楽を作る中でオーケストラを入れてみたり打ち込みの音を入れてみたりもしたけど、結局自分たちが出したい音って「自分たちによる生音」で、他のアーティストが打ち込みの音楽を作っていてもそれに負けない生のロックバンドでありたいと。バンドで、4人で出せる音だけで勝負していきたい、っていうのを、32年間試行錯誤しながらもやってきて、今またそう思えるのがすごいことだし、彼らのすごくいいところなんだと思いました。
というわけでスピッツ熱を今めらめらと燃やしているんだけど、先日TSUTAYAに行ってふと見つけたのが "WE ARE Perfume - World Tour 3rd DOCUMENT" のDVD。
2015年に公開された、Perfumeのドキュメント映画だそうです。Perfumeには個人的に思い出と思い入れがあって、ちょうど10年くらい前にサークルで踊ることになって初めて知ったのが出逢い。ダンス可愛いし歳も近いし、暫くよく聴いてMV観ては振りコピしてたんだけど、社会人になって色々余裕なくなってきて追えなくなった。それでもどんどん新曲出して、タイアップなどしまくっていて、メディアではどんどん露出が増えていくので活躍だけは目にしていた。プロジェクションマッピングとかワールドツアーとか、もうどんどん彼女たちの存在が唯一無二として認められ確立していき、ダンスも「ちょっと踊るか」って出来るレベルじゃなくなり、「可愛い~」とか「歳近い~」とかで語れる存在ではなくなって。元々は広島の芋ガールだった彼女らがもう世界的アーティストなわけで、こんな日々惰性で生活を送っているような人間が「Perfume結構好きで~」とか軽く言えるような人たちじゃない感じがして…。
でもこのDVDを見つけて、ちょっと最近の(といっても4年前だけど)Perfume観たいな、って思っちゃったので、借りてきて、週末の夜に一人で観ました。
これがプロフェッショナルだわ…って思いましたよ、ええ、思いましたとも。Perfumeの3人だけじゃなく、周りのスタッフの方々も、音楽というよりひとつの”エンタメ”として、より良く見せることをめちゃくちゃ意識してひとつひとつのライブに挑んでいるというのがひしひしと伝わってきました。これ、音楽DVDというより仕事の仕方の話では、と思うくらい。
このお3方、めちゃくちゃ仲良いんだよね。楽しそうだし、お互いを信頼している感じがすごいなと。同い年でビジネスパートナーで一心同体で運命共同体で、それでもあんなに笑いあって仕事のことは真面目に話し合って反省会して、って普通できなくない?競争心とか嫉妬とかマウンティングとか生じがちじゃない?それも含めてプロフェッショナルなのかもしれないけど。でもこう、「3人でPerfumeだから」って認め合い、お互いのことを尊敬して好きで信じて長いことやっていられる、っていうところはスピッツにも共通するところだな~とか勝手に思った。
とはいえ、スピッツとPerfumeの基本スタンスは、寧ろ正反対ともいえる。最初に書いたとおり、スピッツは生のロックを聴かせたい人たちで、基本的には作詞作曲も自分たちで行っている。Perfumeはバリバリの打ち込みテクノポップ、作詞作曲も振り付けも、基本的には別の人、ライブは口パク。でも「それってプロじゃないよね」なんて言う人は、少なくともPerfumeを知ってる人にはいない。WE ARE Perfumeを観ていて何度も突き付けられるのは、彼女らのプロ根性でしかない。セットリスト、曲順、曲間の間合い、衣装まで、至る所に思考を巡らせていて、お客さんの反応をとてもよく見ていて、一公演ごとに改善しようとしている。あれだけシンクロしてるから、ダンスはめちゃくちゃ練習してるんだろうな~、くらいは思うじゃん。でも全然それだけじゃないし、決められた踊りを決められた順に踊っているだけの人たちではない。
DVDの中で、あ~ちゃんが毎回のようにライブ前に「来てくれてるお客さんへの感謝を、パフォーマンスでお返ししましょう」って言うんだよね。彼女たちはプライドを持って、ひたすらにお客さんのためにステージに立っているし、それをとても楽しんでいて、その状況に感謝している。スピッツはさ、自分たちがバンドをしたい、っていう欲求を「スピッツ」という形で成り立たせていて、Perfumeにとっては、Perfumeでいることがすごく重要で、「こういうことがやりたい」という意志でやってきているわけではない、と言って伝わるだろうか。正反対だけど、どっちもプロフェッショナルを突き詰めてそうなってるんだろうな、って思った。
どっちが良くてどっちが悪い、じゃない。どっちも素晴らしいし、どちらもメンバーチェンジも活動休止もなく長年第一線で活躍しているのがその一番の証だと思う。
プロってすごい。音楽なんて娯楽だと言えばそれまでだけど、だからこそ、その道で生きていくためには才能と運と継続的な努力と協力者と思考を止めないことが必要なんだと思う。だからこそ、プロの音楽はどこかの誰かの人生を変える力を持っているし、誰かの感情を大きく動かすことができるのだと思う。素晴らしいアーティストを好きでいられるって幸せだな。例えそれが娯楽だとしても。
2019.10.07記
2019.01.11編集
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